ナポレオン・ボナパルト (フランス皇帝)

フランス革命の混乱を終わらせ、ヨーロッパを震撼させた天才軍人──ナポレオン・ボナパルト。皇帝として君臨し、戦場で帝国を築いた彼は、同時に法や行政の近代化を推し進めた。英雄であり独裁者でもあったその生涯は、近代ヨーロッパの秩序を根本から作り変えた。

基本情報

人物の背景

ナポレオンは、コルシカ島の小貴族の家に生まれ、フランス本土で軍事教育を受けた。砲兵将校として頭角を現し、フランス革命戦争での功績によって急速に出世。1799年、クーデター（ブリュメール18日の政変）によって統領政府を樹立し、事実上の独裁者となる。

1804年には国民の支持を背景に自ら皇帝に即位し、ヨーロッパの覇者として新たな秩序を築いた。軍事天才として多くの戦場で勝利を重ねる一方、「ナポレオン法典」の制定などにより、法の下の平等と近代国家の原理を打ち立てた。

その野望は大陸全土に広がったが、英国・ロシア・プロイセン・オーストリアなどの連合軍との長い戦争の果てに敗れ、ついには流刑の身となる。

治世で起きた主要な出来事

• ブリュメール18日の政変（1799年）
  統領政府を樹立し、実質的にフランスの支配者となる。混乱する革命を終息させ、政治的安定を取り戻した。

• ナポレオン法典の制定（1804年）
  近代民法の礎となる「民法典（Code civil）」を制定。法の下の平等や財産権を保障し、革命の理念を制度として定着させた。

• 皇帝即位とヨーロッパ征服（1804〜1812年）
  サン＝ピエール大聖堂で自ら戴冠。アウステルリッツの戦い（1805年）などで連合軍を撃破し、ヨーロッパの覇権を掌握した。

• ロシア遠征の失敗（1812年）
  過酷な冬と補給不足により壊滅的敗北を喫す。これが帝国の崩壊の始まりとなる。

• 百日天下と最終敗北（1815年）
  エルバ島から脱出し、再び政権を握るも、ワーテルローの戦いで連合軍に敗北。再び退位し、セントヘレナ島へ流刑された。

ナポレオン1世は、軍事征服によってヨーロッパを塗り替えただけでなく、「近代国家」という理念を広めた人物であった。彼の遺産は、剣よりも法と制度にあり、敗北してなおフランスとヨーロッパの精神を支配し続けた。