三十年戦争の最中、ヴァレンシュタイン (アルブレヒト・ヴェンツェル・エウゼビウス・フォン・ヴァレンシュタイン) は軍人でありながら「経営者」として帝国最大の軍を築き上げた男である。
皇帝の忠臣にして、同時に最も恐れられた存在—その野望は戦場を超えて帝国の中枢に及んだ。
基本情報
| 地位 | 神聖ローマ帝国軍総司令官 |
| 出生 |
1583年9月24日(ボヘミア・ヘルニーツェ)
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| 死去 | 1634年2月25日(ボヘミア・エゲル) |
| 享年 | 50 |
| 主君 |
フェルディナント2世(神聖ローマ皇帝)
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| 伴侶 |
イザベラ・カテリーナ・フォン・ハルラッハ
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| 出身 | ボヘミア貴族(改宗後はカトリック) |
| 父親 |
フランソワ・デュ・プレシ(プワトゥー貴族)
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| 死因 | 皇帝の密命により暗殺(エゲルにて) |
人物の背景
ヴァレンシュタインは、没落したボヘミア貴族の家に生まれた。青年期にカトリックへ改宗すると、ハプスブルク家への忠誠を示して出世の道を開く。
やがて軍事的才覚と財務の天才ぶりを発揮し、自らの資金で軍を編成。傭兵制を再編し、戦費を敵地からの徴発で賄う「自給自足の軍隊」を作り上げた。
彼のもとには、飢えた兵士だけでなく野心家たちが集まり、帝国最大の軍勢が誕生する。しかしその圧倒的な力は、やがて皇帝フェルディナント2世の恐怖を呼び覚ますことになる。
治世で起きた主要な出来事
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三十年戦争への登場(1625年)
フェルディナント2世の要請で傭兵軍を組織。デンマーク王クリスチャン4世を撃退し、帝国の危機を救う。軍事・経済両面での成功により、莫大な領地と影響力を獲得。 -
ヴァレンシュタインの失脚(1630年)
その権力を恐れた諸侯と皇帝により罷免される。だが帝国軍の弱体化とスウェーデンの台頭により、わずか2年後に再び召還される。 -
リュッツェンの戦い(1632年)
スウェーデン王グスタフ・アドルフと激突。戦いは血戦の末、王を討ち取るも、ヴァレンシュタイン自身も疲弊し、皇帝への忠誠を失い始める。 -
陰謀と最期(1634年)
皇帝への反乱を画策したと疑われ、エゲルで暗殺される。皇帝の密命を受けた自軍の将校たちによって命を絶たれた。
ヴァレンシュタインは、単なる傭兵将軍ではなく「戦争経済の創始者」とも呼べる存在だった。彼の軍制改革は近代的な常備軍の原型となり、その死は三十年戦争の転換点を象徴する。
皇帝の野心を支え、やがてその皇帝に消された男——彼の生涯は、権力の光と影そのものだった。

