【ビジュアル年表】ハプスブルク家700年の興亡を一望する

ハプスブルク家の歴史とは、「ヨーロッパ地図の更新史」でもある。

1273年のルドルフ1世即位に始まり、1918年の帝国崩壊まで、ハプスブルクの名は絶えず政権中枢に刻まれ続けた。このページでは、信頼できる一次資料と史料に基づいて、その歴史を丁寧に編んだ年表を掲載する。

第1章｜皇帝位の世襲へ（〜1493年）

年代	出来事	図解
1020	ハビヒツブルク城 建造
1250	大空位時代 始まる
1273	ルドルフ1世、ドイツ王に即位
1278	マルヒフェルトの戦い、オタカル2世を破る
1282	ハプスブルク家のオーストリア支配開始
1291	ルドルフ1世死去、スイスが独立へ動き出す
1298	アルブレヒト1世、ドイツ王に即位
1308	アルブレヒト1世、暗殺される
1356	カール4世、金印勅書を発布
1438	アルブレヒト2世、ドイツ王に即位
1440	フリードリヒ3世、神聖ローマ皇帝に即位 （以降、皇帝位が事実上世襲化）
1477	マクシミリアン1世、ブルゴーニュ公女マリーと結婚
1493	フリードリヒ3世死去、マクシミリアンが後継者に

第2章｜「世界帝国」の誕生（1493〜1556年）

年代	出来事	図解
1494	イタリア戦争 始まる
1495	帝国改革（帝国クライス制の導入）
1497	スペイン王室とハプスブルク家の二重婚姻政策
1508	マクシミリアン1世、皇帝を名乗る（教皇戴冠なし）
1516	カルロス1世、スペイン王に即位
1517	ルター、95か条の論題を発表（宗教改革始まる）
1519	マクシミリアン1世死去、カール5世が神聖ローマ皇帝選出
1521	コルテス、アステカ帝国征服
1526	モハーチの戦いでハンガリー王国滅亡 ボヘミア・ハンガリー継承
1529	第一次ウィーン包囲（オスマン帝国による）
1530	カール5世、ボローニャで皇帝戴冠（最後の教皇戴冠）
1538	プレヴェザの海戦、スペイン海軍敗北
1545	トリエント公会議 開始（〜1563年）
1555	アウクスブルクの宗教和議

第3章｜二つのハプスブルク（1556〜1700年）

年代	出来事	図解
1556	カール5世退位、ハプスブルク家が分裂 （スペイン系とオーストリア系）
1568	オランダ独立戦争（八十年戦争）始まる
1571	レパントの海戦 スペイン・ヴェネツィア連合艦隊がオスマン帝国に勝利
1580	フェリペ2世、ポルトガル王を兼任
1588	無敵艦隊アルマダの敗北（スペインの海上覇権に陰り）
1618	プラハ窓外投擲事件
1618	三十年戦争勃発
1620	白山の戦いでボヘミア反乱軍敗北
1648	ヴェストファーレン条約 (ウェストファリア条約) (三十年戦争終結)
1658	レオポルト1世が神聖ローマ皇帝に即位
1683	第二次ウィーン包囲、オスマン軍を撃退
1687	ハンガリー王位をハプスブルク家が世襲化
1699	カールロヴィッツ条約 ハプスブルク家がハンガリー南部・トランシルヴァニアを正式獲得
1700	スペイン・ハプスブルク家断絶、スペイン継承戦争の前夜

第4章｜分裂と再編の時代（1700〜1804年）

年代	出来事	図解
1701	スペイン継承戦争 始まる
1713	ユトレヒト条約 スペイン領ナポリ・ネーデルラントをオーストリアが継承
1740	カール6世死去、マリア・テレジア即位 （オーストリア継承戦争へ）
1748	アーヘンの和約、オーストリア継承戦争終結 (右図：右上が奪われた地、シュレージエン)
1756	七年戦争 始まる
1763	フベルトゥスブルク条約 (七年戦争終結)
1765	ヨーゼフ2世、共同統治者として即位
1772	第一次ポーランド分割 (左図オレンジ部分：ハプスブルクがガリツィア獲得)
1780	マリア・テレジア死去、ヨーゼフ2世単独統治へ
1789	フランス革命勃発
1792	フランス革命戦争始まる、フランツ2世即位

第5章｜オーストリア帝国と二重帝国（1804〜1918年）

年代	出来事	図解
1804	フランツ2世、オーストリア皇帝（フランツ1世）として即位
1806	神聖ローマ帝国の正式解体、ハプスブルク家が帝冠を返上
1815	ウィーン会議でオーストリアが中欧の中心国に復帰
1848	三月革命、メッテルニヒ失脚 フランツ・ヨーゼフ1世即位
1866	普墺戦争で敗北
1867	ドイツ連邦脱退、アウスグライヒ（二重帝国成立） オーストリア＝ハンガリー帝国発足
1873	三帝同盟の締結 (ドイツ、ロシア、オーストリア＝ハンガリー帝国)
1908	ボスニア・ヘルツェゴビナ併合
1914	サラエボ事件 第一次世界大戦勃発
1916	フランツ・ヨーゼフ1世死去、カール1世即位
1918	オーストリア＝ハンガリー帝国崩壊、王政廃止

第6章｜帝国の残響（1918年以降）

年代	出来事	図解
1919	サン＝ジェルマン条約 オーストリア共和国成立
1921	カール1世、王位返還を試みるが失敗（復位運動）
1922	カール1世、亡命先のマデイラ島で死去
1938	ナチス・ドイツによるオーストリア併合（アンシュルス）
1945	第二次世界大戦終結、オーストリア第二共和国発足
196	オットー・フォン・ハプスブルク、公的に王位放棄を宣言
2007	オットー、EUの「ヨーロッパ憲章」推進活動に参加
2011	オットー・フォン・ハプスブルク死去

まとめ

この壮大な時の流れを、年号と出来事でたどるとき、見えてくるのは「帝国とは何だったのか」という問いへの輪郭である。

ハプスブルク家は武力よりも婚姻によって広がり、宗教と政治の狭間で揺れながらも、ヨーロッパの中枢に居座り続けた。王位の世襲、皇帝の即位、都市の独立、宗教改革、戦争と講和。

そして帝国の終焉とその“残響”。

この年表は、ただの記録ではない。 それは、ヨーロッパという舞台を動かし続けた名もなき人々と、時代を象徴する王たちの「系譜」であり、「記憶」であり、「遺産」なのである。

もしあなたの中の歴史地図が、ほんの少しでも塗り替えられたとしたら――。 このページが、そのきっかけになれたなら、それこそが、年表が語る帝国の価値である。

参考文献

• 『ハプスブルク帝国 1000年の歴史』岩崎周一（講談社現代新書）
• 図解雑学　ハプスブルク家 菊池良生 (ナツメ社)
• German History in Documents and Images
• Die Welt der Habsburger（オーストリア国営歴史ポータル）
• Euratlas Historical Maps
• Josephinian Land Survey（1763–1787）オーストリア国家公文書館
• Philips’ New Historical Atlas for Students（1911年、英国）
• 画像出典：　© Velum Press / ChatGPT生成（史実をもとに再構成したイメージ）