プラハ窓外投擲事件とは？【三十年戦争を呼んだ“窓からの裁き”】

宗教対立の伏線

この事件の背景には、半世紀以上前の「アウクスブルクの和議」がある。

1555年、皇帝フェルディナント1世は「領邦の君主が宗教を決める」という妥協策を提示し、ひとまず内乱を収めた。だが、それは「個人の信仰の自由」を認めず、さらに「カルヴァン派」を対象から外した不完全な和議だった。

つまり、対立の火種は埋められただけで、消えはしなかったのである。

ハプスブルク家とボヘミアの緊張

1617年、熱心なカトリック信者フェルディナント2世が「ボヘミア王」に即位する。彼はプロテスタントに対して妥協を許さず、「従わぬ者には罰を与える」と公言した。

信仰と自治を守りたいボヘミアのプロテスタント貴族たちは、ついに決断する。彼らが選んだ手段こそ、プラハ城での「窓外投擲」だった。

運命の一投

(イメージ画像)

1618年5月23日、貴族たちは皇帝の代理人マルティニツ、スラヴァタ、書記ファブリティウスを詰問した。口論の末、響き渡った叫びはこうだった。

「神の裁きを受けよ！」

その瞬間、三人は窓から放り投げられた。高さ15メートル――通常なら即死だ。だが彼らは奇跡的に生還する。

カトリック側は「聖母マリアが救った」と言い、プロテスタント側は「糞尿の山に落ちただけだ」と嘲笑した。だがどちらの解釈であれ、この投擲が後戻りできない一線を越えたことは誰の目にも明らかだった。

まとめ

プラハ窓外投擲事件――

それは、皇帝の代理人を窓から突き落とした一瞬の出来事だった。だがその衝撃は、帝国の権威を揺るがし、宗教戦争を国家間の大戦へと変貌させた。

三十年戦争は「信仰」の名を借りた権力闘争となり、最終的に1648年のヴェストファーレン条約で終結する。疲弊した帝国の姿と、新たに台頭する主権国家――それが焼け跡に残されたものだった。

窓から放たれた一投は、ヨーロッパの歴史の歯車を不可逆に回してしまったのである。

さらに詳しく：
📖 ヴェストファーレン条約｜ハプスブルク家の衰退とフランスの台頭
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📖 フェルディナント2世｜宗教と帝国の狭間で揺れた皇帝